薄毛治療の意義

薄毛は放置したからといって命の危険を伴うものではありません。しかし、人によっては前向きな気持ちや自信を失わせるなど、日常生活において深刻な影響を及ぼすこともあります。
頭部の見た目を気にして、仕事でもプライベートでも一歩引いた態度をとってしまう。そのせいで、本来の魅力を十分に発揮できないで悩む方が多くいるのも事実です。薄毛の方は、そうでない方に比べてQOL(生活の質)が低いという研究結果もあります[1]。
薄毛治療を通じて自分らしく、前向きな人生を送ることができるなら、治療に取り組む価値は大いにあります。自分自身を大切にし、より良い毎日を過ごすためにも、薄毛治療を検討されてはいかがでしょう。
髪はどのように成長する?
自分に合った薄毛治療を探す前に、まずは毛髪がどのようにして生えるのかを理解しましょう。
髪の毛の成長のメカニズムを知る上で注目すべきは、「毛包」
です。毛包は皮膚の下に隠れていて、毛髪の成長の起点となります。
その中でも最もコアな部分は、根本の丸く膨らんだ部分「毛球部」です。
髪は、毛球部内の毛乳頭細胞の指令を受けた毛母細胞が、分裂と増殖を繰り返すことで作られます。毛母細胞が活動している間、古い髪が新しい髪に「下から上へ」と押し出されるように成長を続けます。

なぜ薄毛に?
原因はヘアサイクルの乱れ
髪の毛は、成長したり抜けたりを繰り返しています。ですから、毛が抜けること自体は問題ありません(1日100本程度は普通に抜けます)。
問題は抜け毛の量が多くなりすぎること。これは、髪の生え替わりのサイクルが上手くいっていないサインです。髪がきちんと成長する前に、細くて短い髪まで抜けてしまう。すると、抜け毛の量がグッと増えて、気づけば「あれ、髪薄くなってない?」と感じるようになるわけです。
正常なヘアサイクル
毛髪は、ある程度伸びると役目を終えて、自然に抜け落ちていきます。そして、抜け落ちた場所から再び新しい毛髪が生えてくる。この繰り返しが「ヘアサイクル」と呼ばれるものです。
ヘアサイクルには、成長期、退行期、休止期という3つの段階があります。これらのフェーズが上手く回っていると、毛髪は健康に保たれます。

成長期 | 毛母細胞が分裂と増殖を活発に繰り返している時期です。この期間はヘアサイクルの90%を占め、2〜6年続きます(成長期が6年続くと、髪は60〜70cmに達します)。 |
---|---|
退行期 | 毛包の退縮が始まり、毛母細胞の成長が減速します。減速してから完全に止まるまでの期間を退行期と呼びます。期間としては2〜3週間ほどです。 |
休止期 | 毛母細胞の活動が休止している期間です。毛包全体が小さく退縮し、ちょっとした刺激でも抜けるようになります。この期間は数ヶ月続きます。 |
薄毛のヘアサイクル
薄毛が起きるのは、髪の成長サイクルがうまくいかなくなったとき。通常は2〜6年続く成長期が、1年未満に短縮されてしまうのです。そのために本来太く長く成長するはずの髪が、成長しきる前に抜けていってしまいます。
壮年期の薄毛には男性型と女性型があり、薄毛になる原因やその症状が少し違いますが、どちらにも共通しているのは、このヘアサイクルの乱れです。薄毛の改善には、この乱れたヘアサイクルを本来の正常なサイクルに戻していくことが必要になります。

私も薄毛?男女で違う
薄毛の原因と症状
壮年期の脱毛症には男性型と女性型があり、原因や症状が違います。ここでは、その違いについて説明します。
男性型脱毛症:AGA
AGA とは、男性ホルモンの影響により薄毛が進行する脱毛症です。思春期以降、薄毛や抜け毛に悩む男性の多くはAGAだと考えられています。額の生え際や頭頂部の髪が薄くなるのが一般的な特徴です。また、このような症状は、女性にも見られることがあります。
この薄毛の原因は、男性ホルモンのテストステロンです。テストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きでジヒドロテストステロンに変化し、毛乳頭細胞の特定の受容体と結合すると、毛母細胞に対して脱毛を促進する指令を出すようになります。この結果、薄毛が進行します。
ちなみに、後頭部や側頭部の毛髪が維持されやすいのは、これらの部位にジヒドロテストステロンをキャッチする受容体が少ないためです。

男性型脱毛症のセルフチェック
最近、抜け毛や髪のボリュームが気になる…そんな方のために、簡単なセルフチェックをご用意しました。適切な薄毛治療を受けるためには、まず“ご自身の薄毛タイプ”を知ることが重要です。
このチャート式セルフチェックでは、医師監修の簡易診断により、男性型脱毛症の可能性を判別し、あなたに適したアドバイスと最新治療の適応可否を提示します。
女性型脱毛症:FPHL
女性型脱毛症(FPHL)は、女性に生じる脱毛・薄毛の総称です。
女性の薄毛は、以前はAGAの女性版(男性ホルモンの影響で 生じる)と考えられ、FAGA(Female AGA)と呼ばれていましたが、この他にも様々な要因で生じることがわかってきました。
これを受け、現在ではAGA(男性型脱毛症)と区別する意味でFPHL(Female Pattern Hair Loss:女性型脱毛症)という呼び方が一般的になっています。ただ、FPHLの原因は多彩で、まだ全ては解明されていません。
進行度合いの判定にはルードヴィッヒ分類などが用いられます。
男性と異なり、多くの場合広範囲が全体的に薄くなる症状がみられるのが特徴です。

女性型脱毛症のセルフチェック
最近、抜け毛や髪のボリュームが気になる…そんな方のために、簡単なセルフチェックをご用意しました。適切な薄毛治療を受けるためには、まず“ご自身の薄毛タイプ”を知ることが重要です。
このチャート式セルフチェックでは、医師監修の簡易診断により、女性型脱毛症の可能性を判別し、あなたに適したアドバイスと最新治療の適応可否を提示します。
どんな治療法がある?
〜それぞれの特徴と
メリット/デメリット〜
薄毛治療の現場で実際に行われている治療について、メリット・デメリットを含めて概要をご紹介します。
右スクロールで全体が見られます。→
薬物治療 | 機 器 | 植 毛 | かつら | 再生医療 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
治療法 | フィナステリド/ デュタステリド |
ミノキシジル | アデノシン | LED/ 低出力レーザー照射 |
自家植毛 | かつら着用 | 成長因子導入/ 細胞移植療法 |
内 服 | 外用/(内服) | 外 用 | 照 射 | 手 術 | − | 注 入 | |
投与間隔 | 毎 日 | 毎 日 | 毎 日 | 週3回程度 | 原則1度 | 定期的に交換 | 毎月〜半年ごと |
主な副作用 (制限/課題) |
リビドー減退、 肝機能障害 |
頭皮のかゆみ、赤み | − | 照射部皮膚の 乾燥、かゆみ |
施術時の侵襲 | − | 注入時の痛み |
メリット |
|
|
|
|
|
|
|
デメリット |
|
|
|
|
|
|
|
薬物治療

- フィナステリド(内服薬)
-
- 元々は前立腺肥大の治療薬として開発されましたが、のちに男性型脱毛症(AGA)にも有効なことが発見された薬剤です。
- 「男性の薄毛」でもご説明しましたが、男性型脱毛症(AGA)は、テストステロンという男性ホルモンが、5αリダクターゼという酵素の働きでジヒドロテストステロンに変化し、これが毛母細胞に脱毛の指令を出すことで進行します。
- フィナステリドには、5αリダクターゼの働きを阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変化を抑制する働きがあります。
- なお、女性に対する適応はありません。
- デュタステリド(内服薬)
-
- テストステロンをジヒドロテストステロンに変化させる酵素(5αリダクターゼ)には、I型とⅡ型があります。前頭部や頭頂部など、男性型脱毛症が生じる部位に存在するのはⅡ型のため,それを阻害すれば十分とも考えられますが、現在ではⅠ型の5αリダクターゼも薄毛に関係していることがわかっています。
- デュタステリドはI型、Ⅱ型とも阻害する治療薬です(ちなみに、フィナステリドは、Ⅱ型の酵素だけを阻害します)。
- このことから、フィナステリドよりも高い効果が期待できますが、反面、EDやリビドー減退といった副作用もフィナステリドより多く報告されています。
- なお、フィナステリド同様、女性に対する適応はありません。
- ミノキシジル(外用薬/内服薬)
-
- ミノキシジルは、当初降圧薬(内服薬)として開発されましたが、この薬剤を服用する患者さんに多毛の副作用が見られたことから、育毛剤へ転用された薬剤です。
- 内服薬と外用薬がありますが、内服薬は認可されていないので、ほとんどの場合は外用薬で用いられます。認可されている外用薬も医療機関で処方されるものではなく、一般用医薬品として薬局薬店で購入するものとなります。
- 発毛効果は、細胞成長因子を介した毛母細胞の増殖促進作用や、血管拡張作用などによってもたらされると考えられています[2]。
- フィナステリド、デュタステリドとは作用メカニズムが異なるので、これらとの併用が可能です。また、女性にも使用できます。
- アデノシン(外用薬)
-
- 細胞成長因子の産生促進、毛包の成長期を延長、血行促進といった効果が期待できます。
- 男性、女性ともに使用できます。
機器
(LED/低出力レーザー照射)

- LEDおよび低出力レーザーの発毛効果に関しては、有用性を示す根拠があり、副作用も比較的軽微です。このことから、ガイドラインでは適切な機材を使用して行うよう勧められています[3]。
植毛(自毛植毛)

- 薄毛の影響が少ない側頭部や後頭部から健康な毛髪を採取し、これを薄毛が気になる部位に移植します。
- 方法としては、大きく2通りあります。移植に使う毛包を一つ一つ採取するFUE法と、後頭部の頭皮を帯状(約10~20cm)に切り取って、そこから移植に使う毛包を採取するFUT法です。
- FUE法の方が術後の痛みや傷が軽いですが、手術自体の難易度は高く、費用も高額になります。
かつら

- かつらは薄毛自体を改善する効果はありませんが、日常生活での満足感、QOLは改善しうると考えられます[4][5]。
再生医療

- 成長因子導入/細胞移植療法
-
- 脂肪組織や間葉系由来幹細胞の直接移植や、それらの分泌物を含む培養上清あるいはPRP(Platelet-Rich Plasma:自己多血小板血漿)を薄毛部位に注入する治療です。
- 現時点では安全性なども含め,その有効性は決して十分に検証されているとはいえず、広く一般的に受けられる治療ではないことから、ガイドラインの推奨度はC2(行わないほうがよい)です。ただ、期待度は大きく、今後エビデンスが集積することで、評価が引き上げられる可能性はあります[3]。
現在の薄毛治療の限界と、
新しい選択肢
「S-DSC毛髪再生医療」
現在、薄毛治療の選択肢は多岐に渡り、患者様の満足度も向上しました。しかし、解決が望まれる課題もいくつかあります。
こうした課題を解決しうる選択肢として、新しい再生医療「S-DSC毛髪再生医療」が一部の医療機関で受けていただけるようになりました。
