女性の薄毛は、加齢やホルモンバランスの変化、頭皮環境の悪化などさまざまな要因で進行します。以前より抜け毛が増えた、分け目が目立つようになった、髪のボリュームが減ったと感じる場合は、薄毛が進行しているサインかもしれません。そうした症状が気になる場合は、まず皮膚科で相談できます。皮膚科では、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など疾患に伴う脱毛のほか、医療機関によってはFPHL(女性型脱毛症)も診療しています。
月経異常や更年期症状が強い場合は婦人科、強い倦怠感、動悸、体重変化などの全身症状を伴う場合は内科や内分泌内科での確認が必要になることもあります。
それぞれの原因に対して適切な治療は異なるため、セルフケアを続けるよりも、まずは医師による診断を受けることが大切です。
ここでは皮膚科での薄毛治療の診療の流れと治療の種類を整理しつつ、実用化されている「S-DSC毛髪再生医療」について紹介します。
※「FAGA(女性の男性型脱毛症)」は、女性の進行性の薄毛を指す言葉として普及しています。しかし、最新研究により、男性ホルモンの影響だけでは説明できない症例が多いことがわかり、国際的に「FPHL(女性型脱毛症)」という用語が広く用いられています。以下、FPHLで統一して表記します。

全体の要点
- 毛髪再生医療はすでに自由診療として実用化
- iPS細胞などを用いた毛髪再生医療の技術のいくつかは研究段階
- S-DSC毛髪再生医療は、自分自身の細胞を用いる治療で特に女性型脱毛症の新たな治療選択肢として一部の医療機関で提供開始済み
- S-DSC毛髪再生医療の効果や副作用、治療を受けられる医療機関や治療の流れ
皮膚科で受けられる女性の薄毛治療
薄毛の原因によりさまざまな診療科の選択肢がありますが、頭皮を含めた皮膚全般の専門である皮膚科での治療と保険適用の基本的な考え方を含めて紹介します。
皮膚全般の専門:皮膚科での女性の薄毛治療
皮膚科は頭皮を含めた皮膚・毛髪・爪を専門とする診療科です。抜け毛の増加、分け目の広がり、頭皮の赤み・かゆみなどが気になる場合や、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎などの頭皮疾患に伴う脱毛から、医療機関によってはFPHL(女性型脱毛症)などが診療範囲に含まれます。見た目だけでは判断が難しいため、まず皮膚科などの医療機関で原因を確認することが大切です。
女性の薄毛は単一の原因で起こることが少なく、皮膚科では頭皮の視診、触診、問診等を通じて、皮膚疾患、脱毛のパターン、生活背景、必要に応じた血液検査などをもとに原因を確認します。
強い倦怠感、体重変化、動悸などがある場合は内科、月経異常や更年期症状が強い場合は婦人科での相談が必要になることもあります。なお、植毛など外科的治療を検討する場合は、形成外科や植毛専門施設が候補となることがありますが、本記事では皮膚科を中心に解説します。
皮膚科で扱う薄毛治療は保険適用になるのか
女性の薄毛治療は、原因や診断名によって保険適用の有無が異なります。円形脱毛症、脂漏性皮膚炎など、疾患に伴う脱毛と診断される場合は保険診療の対象となることがあります。一方、FPHLなどの薄毛治療は原則として自費診療となります。原因によって保険適用の有無が異なるため、まずは医師の診断を受けることが重要です。
原因・診断名 |
保険適用 |
主な治療 |
|---|---|---|
円形脱毛症 |
保険適用の場合が多い |
ステロイド外用・注射など |
脂漏性皮膚炎による脱毛 |
保険適用の場合が多い |
抗真菌薬・抗炎症薬 |
FPHL(女性型脱毛症) |
原則自費診療 |
外用薬・再生医療など |
皮膚科で女性が受けられる主な薄毛治療法
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン
2017年版」に基づき、女性の薄毛治療の状況を整理すると、次のようになります。
| 治療法 | 女性型脱毛症(FPHL)での位置づけ |
|---|---|
| ミノキシジル外用 | 推奨度A:行うよう強く勧める |
| LED・低出力レーザー | 推奨度B:行うよう勧める |
| アデノシン外用 | 推奨度C1:行ってもよい |
| 成長因子導入・細胞移植療法 | 推奨度C2:行わないほうがよい (2017年版ガイドラインでは慎重な位置づけ) |
| フィナステリド・デュタステリド内服 | 推奨度D:行うべきではない |
| ミノキシジル内服 | 推奨度D:行うべきではない |
| S-DSC毛髪再生医療 | 2017年版ガイドライン策定後に実用化されたため、同ガイドラインには記載なし |
※2017年版ガイドラインの「成長因子導入および細胞移植療法」は、当時得られていたエビデンスに基づく評価です。S-DSC毛髪再生医療は、その後に臨床研究を経て実用化された治療であるため、同ガイドラインには個別の治療として記載されていません。
ガイドラインで推奨される女性の薄毛治療
女性のFPHLに対して推奨度が高い治療はミノキシジル外用薬(女性には1%製剤)であり、効果がわかるまで少なくとも6か月間使用*1するのが一般的とされています。毛包周囲の血管に働きかけ、毛母細胞を活性化する作用が報告されており、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」でも推奨されています。ただし、一般用医薬品であるため処方箋は不要であり、医療機関を受診した場合でも、市販薬として薬局での購入を案内されるケースが少なくありません。使用を中止すると効果は徐々に失われるため、継続して使用することが前提になります。
また、S-DSC毛髪再生医療は2017年版ガイドラインの策定後に実用化された治療であるため、当時のガイドラインの評価対象となっていません。一方で、再生医療等安全性確保法に基づく手続きを経て、自由診療として医療機関で提供されています。
選択肢が限られる女性の薄毛治療
症状や治療への反応に応じて、ミノキシジル外用以外の治療が検討されることもあります。なお、男性型脱毛症(AGA)の代表的な治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、女性では有効性が確立しておらず、妊娠時の胎児への影響が懸念されるため、女性は行うべきではない治療*2とされています。そのため、女性の薄毛治療では男性よりも治療の選択肢が限られています。
医療機関によっては、毛髪に必要な栄養素を補うパントガールなどの内服薬や、毛髪の成長をサポートするアデノシン配合外用剤が提案されることがあります。また、一部の病院やクリニックではミノキシジル内服薬が処方される場合もありますが、日本では女性の薄毛治療薬として承認されておらず、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」でも推奨されていません。副作用としては、動悸やむくみ、多毛症などが報告*2 されています。
外用薬や内服薬以外に、成長因子や各種有効成分を頭皮へ注入する治療方法(メソセラピーやHARG療法)は、一部の医療機関で自由診療として提供されています。ただし、使用する製剤や方法は各医療機関によって異なり、標準化された治療とは言いにくい面があります。日本皮膚科学会の2017年版ガイドラインでは、成長因子導入および細胞移植療法について慎重な位置づけが示されているため、治療を受ける場合は根拠、費用、リスク、継続回数を医師に確認することが重要です。

女性にとっての新しい治療の選択肢
毛包に働きかける毛髪再生医療という新しい選択肢も登場しています。最先端の毛髪科学研究を行う大学病院と資生堂が開発した「S-DSC毛髪再生医療」は2024年7月に実用化され、自身の後頭部から採取した毛包由来細胞を培養し、薄毛が気になる部位へ注入する治療です。
「S-DSC毛髪再生医療」は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」策定後に、再生医療等安全性確保法に基づく手続きを経て実用化された治療です。
毛髪の成長に関わる細胞そのものを活用するアプローチであり、臨床研究では、男性型・女性型脱毛症の患者を対象に毛髪の外観や毛髪径(毛の太さ)などが評価され、女性で良好な反応傾向が報告されています。ただし、効果の現れ方には個人差があります。また、S-DSC毛髪再生医療は自分の細胞を使用するため拒絶反応のリスクが低く、毎日の服薬や外用を前提としない点も特徴です。長期の外用薬や薬物療法に不安がある方にとって、新たな選択肢の一つとなっています。
皮膚科の薄毛治療の診察から治療開始までの一般的な流れ
皮膚科で薄毛治療を始めるとき、流れを事前に知っておくと相談がスムーズです。
初診時の問診と頭皮の視診
初診ではまず問診票で薄毛が気になり始めた時期、抜け毛の量、月経や出産歴、更年期の状況、生活習慣などを確認します。その後、医師が頭皮を視診・触診し、必要に応じてマイクロスコープで毛穴の状態や毛径を確認します。これによりFPHL(女性型脱毛症)なのか、円形脱毛症や頭皮疾患を伴うのかを診断します。例えば、FPHLは数年かけて徐々に進行することが多い一方、休止期脱毛症では出産、発熱、急激なダイエット、強いストレスなどの数か月後に、頭部全体の抜け毛が急に増えることがあります。このような経過の違いなども、問診や診察では確認されます。
必要に応じた追加検査(血液検査など)
視診・触診によって脱毛のパターンや進行状況を確認し、おおよその診断を行ったあと、薄毛の原因として他の疾患が疑われる場合や、より詳しい評価が必要と判断された場合には、血液検査などの追加検査を実施することがあります。
治療方針の相談・決定
診察と検査結果を踏まえ、考えられる治療の選択肢、期待される効果、副作用、費用の目安について説明があります。妊娠希望の有無、持病などを共有することで適した治療を選びやすくなります。治療開始後は、経過観察を行い、写真比較や副作用の確認を通じて調整していきます。
【2026年最新】皮膚科をはじめ「S-DSC毛髪再生医療」が受けられる医療機関
「S-DSC毛髪再生医療」は、最先端の毛髪科学研究を行う大学病院と資生堂が長年の研究を経て実用化した自家細胞培養による毛髪再生医療です。再生医療等提供計画の届出を行った医療機関でのみ受けることができます。現在、治療を受けられる医療機関はこちらから確認することができます。
※S-DSC毛髪再生医療は、一定の条件をすべて満たした方が対象となります。適応条件の詳細については、「私は受けられる?S-DSC®毛髪再生医療の適応」をご確認ください。
よくある質問
Q1. 女性の薄毛は皮膚科、婦人科、内科などどの診療科に行けばいいですか?
A.毛が細くなる、抜け毛が増える、分け目が広がる、地肌が目立つなど、皮膚や毛髪のトラブルが中心の場合には、まず皮膚科に相談できます。月経不順や多毛などの症状や、急な体調変化がある場合は婦人科や内科での相談が必要になる場合もあります。
Q2. 治療を始めてどのくらいで変化がわかりますか?
A.ミノキシジル外用薬は少なくとも6か月の継続使用で効果判定が行われる*3のが一般的です。S-DSC毛髪再生医療では、注入後一定期間を経て毛髪の変化を評価していきます。いずれも効果の現れ方には個人差があるため、治療開始前に評価時期を医師と確認しておくことが大切です。
Q3. 薄毛治療は保険適用されますか?
A.円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、疾患として診断される脱毛は保険適用となる場合もあります。一方、FPHL(女性型脱毛症)などの薄毛治療は原則自費診療になります。費用については治療内容や医療機関によって異なるため、事前確認が必要です。
Q4. 治療の継続期間はどれくらいですか?
A.治療方法によって異なります。ミノキシジル外用薬などの薬物療法は、効果を維持するために継続が必要になることがあります。
「S-DSC毛髪再生医療」に関しては、効果の現れ方には個人差があります。臨床研究では最初の注入から3か月後から2割以上に効果が表れ、有効率は15か月後まで時間が経つにつれて向上しました。効果実感については、12か月後および18か月後まで高い水準を維持していました*4。治療期間や継続の必要性は、薄毛の原因や進行度、選択する治療法によって異なります。具体的な治療期間については、医師へ相談してください。
※有効率の定義、評価時点、対象者数、評価方法により結果は異なります。すべての方に同様の効果を保証するものではありません。
Q5. 妊娠中・授乳中でも治療できますか?
A.妊娠中・授乳中はミノキシジルなど多くの薄毛治療薬が使用できません。また、「S-DSC毛髪再生医療」に関しても、妊娠中・授乳中は治療を受けることができません。
産後・授乳終了後に、体調や脱毛の原因を確認したうえで、治療を再検討します。妊娠を希望している場合は、治療開始前に必ず医師へ伝えましょう。
まとめ
女性の薄毛で、抜け毛の増加、分け目の広がり、頭皮の赤み・かゆみなどが気になる場合は、まず皮膚科で相談できます。月経異常や更年期症状が強い場合は婦人科、倦怠感や体重変化などの全身症状を伴う場合は内科での確認が必要になることもあります。
薄毛治療の保険適用は、原因や診断名によって異なります。円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など疾患由来の脱毛は保険診療で対応できる場合がありますが、FPHLなどの薄毛治療は原則として自費診療となります。
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」で推奨される女性の薄毛治療が限られるなか、2024年7月に実用化された「S-DSC毛髪再生医療」という新しい選択肢もあります。自分の症状に合った診療科で医師の診察を受け、自分の状態に合った治療を選んでいくことが重要です。






