はじめに
男性型および女性型脱毛症患者は、潜在的な患者さんを含めて男性・女性合計で非常にたくさんいると言われています。人の生死に関わる病気ではないので重要な疾患ではないと考える人も多くいますが、脱毛によって生じる生活の質の低下などに関する研究も多く行われています。
脱毛症患者は不安度が高い
1つは「不安度が高い」ことです(図1)。
状態不安とは、ある特定の時点や場面などで抱く一時的な感情不安を指します。一方、特性不安とは、その人のキャラクターに由来し、慢性的に不安を感じやすい人の感情不安を指します。壮年性脱毛症の方は男性・女性ともに、正常対照に比べて状態不安・特性不安の両方が高く、不安を抱えながら生活していることが示されています。[1]

脱毛症患者はQOLが低い
脱毛症患者のDLQI(Dermatology Life Quality Index)スコアのデータも出ています(図2)。これは脱毛症患者の皮膚疾患に関連した健康関連QOL(Quality of Life)を検証したものです。それによると、DLQI スコアは8.16 で、生活に中程度の影響がある状態で暮らしていることがわかります。円形脱毛症(6.3)、尋常性ざ瘡(7.45)、白斑(9.11)、乾癬(10.53)の患者スコアと比較しても小さくないことがわかります。さらに、Hair-Specific Skindex-29 スコアは29.22 と、中等度の感情障害があることが示されています。[2]

脱毛症患者は感情指数が低い
脱毛症患者は感情指数が低いこともわかっています。
EQ(Emotional Intelligence Quotient)という言葉を聞いたことはありますでしょうか。知能指数を意味するIQ(Intelligence Quotient) に対して、EQ は心の状態を表す指数と言われます。自分や周囲の人の感情を冷静に分析し、自分の感情をコントロールして良いコミュニケーションをする能力を、感情の視点から測定する指標のことです。
そのEQ を調べるために、EQ-i(Emotional Quotient-Inventory)スケール解析をした研究によると、AGA(Androgenetic Alopecia)患者は健常人に比べてEQ-i スコアが低いというデータが出ています(図3)。[3]
AGA患者には男性も女性も含まれます。有意差のある項目として、自己実現(Self-Actualization)、問題解決(Problem Solving)、楽観主義(Optimism)、幸福感(Happiness)が挙げられ、トータルのEQ も低くなっています。
また、円形脱毛症(Alopecia Areata;AA)患者も、AGA 患者とほぼ同等のEQ-i スコアであることが示されています。
つまり、男性型・女性型脱毛症患者は、相手とのコミュニケーションがあまりうまくいかない状態で生活していることがわかります。

まとめ
これらの研究からも男性型・女性型脱毛が気になる方は、QOLの改善の観点からも、脱毛症の治療について専門医に相談するとよいでしょう。